原因不明の発熱が続くとき、(1)感染症、(2)悪性腫瘍、(3)リウマチ性疾患・膠原病、(4)その他(薬剤熱、内分泌疾患など)の可能性を考える必要があります。一方、検査を進めていく途中で自然に治ったり、また逆に治ったと思っても再び発熱してしまい、診療に難渋する場合があります。近年、自己炎症性疾患という病気の概念が提唱されました。原因不明の持続する発熱または周期性発熱など持続する炎症が存在する場合、この自己炎症性疾患を新たなカテゴリーとして、念頭におく必要があります。

もともと免疫システムは、不都合な病原微生物から人間の体を防御する機構として発達してきました。免疫システムには、「獲得免疫」と「自然免疫」の2つのシステムが存在します。獲得免疫は病原微生物に特異的に反応するのに対し、自然免疫は非特異的に、もしくは病原微生物の共通部分をパターン認識して応答します。また、この2つの機構は、共同で感染防御にあたります。

以前より、獲得免疫の異常として各種の「自己免疫疾患」が知られています。近年、自然免疫の異常によって、炎症反応が自然に起こり臓器障害に至る「自己炎症性疾患」が存在することが明らかになりました。通常、自己免疫疾患では自己抗体や自己反応性Tリンパ球などを認め、自己免疫疾患の診断に有用です。一方、自己炎症性疾患では、自己抗体や自己反応性Tリンパ球は認めません。したがって、自己炎症性疾患の診断には、臨床症状や遺伝子検査が重要です。しかし、自己炎症性疾患には、典型例とともに非典型例が存在するため、診断が難しい患者さんにもしばしば遭遇します。
また、自己炎症性疾患という言葉が定義する疾患の拡がりについても一致した見解はなく、2型糖尿病や動脈硬化も広義の自己炎症性疾患とする意見もあります。
自己炎症性疾患は発症頻度が低く、患者さんの長期予後がどうなるかについて、十分には把握できていません。
治療開発も、十分にはなされていません。

このような日本の自己炎症性疾患の現状を背景に、医療関係者及び患者さんに対して役立つものとなることを目標に、このホームページは作成されました。


自己炎症性疾患とは、自然免疫制御異常により発症する炎症性疾患です。
対比される疾患として、獲得免疫制御異常により発症する自己免疫疾患があります。


自己炎症性疾患の分類

A. 狭義の自己炎症性疾患

家族性地中海熱 
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)
  家族性寒冷蕁麻疹
  Muckle-Wells症候群
  CINCA症候群/NOMID
TNF 受容体関連周期性症候群(TRAPS)
高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス
PAPA(化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡)症候群
中條-西村症候群
Majeed症候群
NLRP12関連周期熱症候群(NAPS12)
インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)
インターロイキン36受容体アンタゴニスト欠損症(DITRA)
フォスフォリパーゼCγ2関連抗体欠損・免疫異常症(PLAID)

B. 広義の自己炎症性疾患

全身型若年性特発性関節炎 
周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA) 
成人スチル病 
ベーチェット病 
痛風 
偽痛風 
Schnitzler症候群 
2型糖尿病   
慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)



「自己炎症疾患およびその類縁疾患に対する診療基盤の確立」研究班のなりたち

平成21年度より、厚生労働省難治性疾患克服研究事業において、これまで十分に研究が行われていない疾患について、診断法の確立や実態把握のための研究を行う研究奨励分野が新たに設置されました。
その中で、自己炎症性疾患に関する研究課題として、①Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS) に対する細胞分子生物学的手法を用いた診療基盤技術の開発、②日本人特有の病態を呈する高IgD症候群に向けた新規診療基盤の確立、③家族性地中海熱の病態解明と治療指針の確立、④TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS) の病態の解明と診断基準作成に関する研究、⑤NOD2変異を基盤とするブラウ症候群/若年発症サルコイドーシスに対する診療基盤の開発、⑥中條-西村症候群の疾患概念の確立と病態解明に基づく特異的治療法の開発、の6題が採択されました。それぞれの疾患の研究が進展し、本邦における各自己炎症性疾患の実態が明らかにされましたが、一方、自己炎症性疾患全体にわたる診療体制のシステム作りの必要性が認識されてきました。
このような必要性にこたえるべく、個々の自己炎症性疾患を包括的に把握する「自己炎症疾患およびその類縁疾患に対する診療基盤の確立」研究班が平成24年度よりスタートしました。
本研究班の目指す到達点は、自己炎症性疾患患者さんのQOL向上・治癒であり、以下の4本の柱をもって、その実現に向けて歩んで行きたいと考えています。皆様のご協力をお願い申し上げます。

「研究班」なりたち

所 属氏 名
研究代表者京都大学小児科平家 俊男
分担研究者信州大学移植免疫感染症上松 一永
久留米大学内科井田 弘明
かずさDNA研究所小原 収
和歌山県立医科大学皮膚科金澤 伸雄
千葉大学皮膚科神戸 直智
岐阜大学小児科近藤 直実
京都大学iPS研究所斉藤 潤
鹿児島大学小児科武井 修治
京都大学iPS研究所中畑 龍俊
京都大学小児科西小森 隆太
防衛医科大学校小児科野々山 恵章
九州大学小児科原 寿郎
東京医科歯科大学小児科森尾 友宏
金沢大学小児科谷内江 昭宏
横浜市立大学小児科横田 俊平
京都府立医科大学小児循環器・腎臓科濱岡 健城
研究協力者京都大学ゲノム医学センター松田 文彦